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講義抄録(11月):大津屋の地域密着型の店作り

2008年11月学期の初日は、いつもと趣を変えて、福井市内に集合。まずはこの日の講師・小川明彦(大津屋社長)さんが展開する、コンビニエンスストア内のお惣菜バイキングで各自昼食を摂ることから始まり、昼食後は大津屋さんの教育事業の拠点、オレボ・ビズスクールの教室で小川さんの講義とケースメソッド授業などをしていただきました。2日目午前の部は、池田のいつもの教室で、滋賀県の湖北職人村で「どっぽ村」プロジェクトを手がける清水陽介さんに自分の手でつくる生活について熱い講義をしていただきました。手は宝、手に能力をつければ、家を建てることなど難しいことじゃない┈┈、日常生活の様々なことを手放してきている私たちの暮らしや生き方が、問い直されました。続いて、午後の部は、『増刊現代農業』編集主幹の甲斐良治さん。貧困問題や食糧危機など閉塞感いっぱいの社会状況のなかで、10年くらい前から農業・農村にこそ新しい生き方があるのではないかと実感されている甲斐さんは、若者が農業・農村に新たな生きがいを見つけ出している現実から、将来への希望を語っていただきました。

地域を支え、地域に支えられる仕事をつくる

大津屋の地域密着型の店作り

小川明彦さん

ファミリー・ビジネスすなわち同族会社で、100年以上続いている会社は、日本には3万数千社あり、アメリカには約800社、ヨーロッパは全部併せて3千社くらいということで、日本はファミリー・ビジネスの先進国と言えるようです。

大津屋は1573年創業、以来430年余、江戸時代から続いてきた造り酒屋でしたが、コンビニエンスストアに業態を変えて成功した会社です。

造り酒屋からの歴史は、30年前に小売りの酒店へ、そして酒店を廃業して昭和56年に福井県初のコンビニエンスストア「オレンジBOXおおつや」開店へと舵を切り、平成6年には「米飯・酒の肴大津屋」をショッピングセンター・ベル内に開店、さらに同12年酒の肴専門店「これがうまいんじゃ・オレボキッチン」エルパ開店、同16年全国初のダイニングコンビニ「オレボステーション」フェニックス店開店、そして昨年には教育事業「Orebo Biz School」を開設し、小売業から人材養成へと将来への道を拓いてきました。

今回は、小川さんの事業展開とその考え方を教えていただきました。

地域の小売業とは

30年前、酒の小売専業に転じたときは、町は年寄りが多くなり、酒屋だけでは商売が成り立ちにくい時代となっていた。ご用聞きに家庭を回っても、(団塊の世代が世帯主になって呼ばれていた)「ニューファミリー」は、どこも留守となった。仕入担当との癒着など閉鎖的な業界に業務用酒販店は行き詰まり、一般家庭向け販売も限界にきていた。

54年、大学を卒業した小川さんは、従来の手間暇かけた売り方から、お客に来てもらい現金で購入してもらう分5%引きで売ろうという奇策を実践し、同業組合から呼び出しを受けたりしながら、従来にない積極策を展開していった。

売りに行ってもだめ、買いに来てもらうしかない。店頭に缶ビールの自販機を置けば店内にはお客は入ってこず、日商3万円を売るのがせいぜい。しかも、その内2万5千円が自販機による売り上げだった。日商30万円売るにはどうすれば・・・。

福井初のコンビニ「オレンジBOX」はこうした行き詰まりの中から生まれた。みかん箱1つから始める初心を忘れないために、名付けられた店名だという。大型のフランチャイズには加盟せず、独自の道を選択した。独自の店は100軒に1軒しか成功せずと言われたが、これを「100軒に1軒は成功するんだ!」と小川さんは読んだ。

日商30万円を目標にしたが、結果は8万円⋯⋯。

当時を振り返って「コンビニエンスストアと言っても、(当時はその)文化がなかった」そのために自分のポケットマネー50万円を福井テレビの知人に預け、CMを流してくれるように頼み込んだ。制作費はほとんど只みたいな15秒CMを、放映時間を最も視聴率のいいプロ野球ニュースの時間に1本1万円で50本流してもらった。すると売上げはたちまちよくなり、日商は30万円くらいまで上がった。

オレンジBOXは平成2年までに福井市内に5店舗と進展し、福井初のPOS(point of sales=販売時点管理)やEOS(electronic ordering system=補充受発注システム)を構築し、本部システムや物流体制を整えていった。24時間営業やおでんを主力を売ったり、酒類販売免許を獲得するなどもしていった。

が一方では、大手の参入で競合も厳しくなっていった。
そのとき、店頭で〝小さな実験〞を試みた。家庭で使うホットプレートを店に持ち込み、これでマルちゃんの3食焼きそばを何も入れずにただ焼いて、添付されている粉末ソースで味付けするだけのものを売ってみると、売れに売れた。続いて、レトルトカレーやカツ丼などを、店内調理の実験みたいにやった。

この手応えをもって、主婦の厳しい目に耐えられるものに挑戦した。ショッピングセンター「ベル」への出店は、板前やコックなどのプロは入れずに、あくまで厳しい主婦の要望に応え、磨き続けることを目指していった。そうした、お客の声を聞きながら、これに応えていくやり方は昔から酒屋時代に、ご用聞きで培った、身についたものであるという。この姿勢というか、やりかたは、その後に引き継がれ、店員の耳は常にお客へと向けられ、次なる商品開発につなげていっているという。

また「オレボステーション」は、コンビニにおにぎりや弁当を買いに来た客が、コンビニ前の駐車場の車の中で買ったものを食べている光景を見て、(買ったものをそこで食べられる)こんな店があったらいいな、というところからつくった。普通の家のダイニング・テーブルや照明があって、ゆっくりくつろいで食べられるような。

当時、何を考えていたのか

ファミリー・ビジネスのイノベーション

  • 既存事業はこのまま継続できるのか。いつまでできるのか。
  • 自分の足で動いて、目で見たことを肌感覚で感じと取り、次世代のチャンスをつくりだす
  • コンビニエンスストアが流行りそうだ。が、意思決定はない。今がチャンスだ。
  • 既存事業の元気なうちに新規事業を軌道に乗せる(数年の赤字は覚悟する)。

なぜ、新規事業は赤字になるか。

利益=売上×利益率×経費 となるが、利益も、利益率も、経費も、すべて分からない。分かるのは、契約時に決定する家賃ぐらい。新規事業の利益とは分からないもののかけ算である。赤字が出る間は、既存事業が元気なうちはいい。既存事業が赤字では、赤字の積み重ねになる。既存事業で稼いでいるときに、新規事業を立ち上げる。

目先の利益より、社会的な利益が大事

教育事業へ

少子高齢化になると、ほとんどのビジネスは売り上げが下がる。モノは無くなると取り合い、無いと欲しくなる。それは人の取り合いにもなる。中小企業はいい人材が取れなくなる。付加価値を生み出す優秀な人材を生み出して、派遣するビジネス。既存事業との相乗効果でシナジー効果が生まれる。ということで、平成19年から始めた。資金、顧客、ノウハウ、不動産、店(物件)、情報などはいずれも陳腐化したり、なくなったりする。頼りないもの。それより、信用、人材が大事。

「組織として教育哲学を持つこと」ということを、次世代に伝える使命感を感じる。

就職支援セミナー

足羽高校の女子がかていの事情で大学進学をあきらめきれず、このまま就職するには、と迷いはじめて、オレボスクールへ来た。希望の就職先と交渉し、オレボスクールに3ヶ月通った後の彼女の対応を、会社の人材教育として認めてもらい、希望が通った。通常、面接して採用しただけでは、3年以内に、高校生は半分辞め、大学生は35%、短大生は40%辞める。で、会社側は3年で半分やめるなら教育なんかせず、こき使ってやると考える。

高校生がなぜそんなに辞めるかと言えば、第一希望の就職先に入るのは3分の1、さらに3分の1は第二希望へ、残りの3分の1のうち約30%は特に希望してない、15%は無理矢理入れられる。という実情がある。

ディスカッション授業

受講生から問題点や答えを引き出し、ディスカッションへともっていく。

その場合、ケースメソッドとレクチャー型を繰り返していく。ディスカッションは、自由に何でもあり、ひらめき・思いつきOK,追加・修正・否定あり、但し、勇気を持って礼節を持って言う、寛容の精神で受ける。

大事なのはプロセスを感じてもらうこと。その人なりに理解してもらうこと。
従来の先生がいて、教科書があって、参考書や問題集があって、テストをし、採点するという入試のようなやり方は、あらかじめ解き方、答え方があってテクニックの競争になり、決められることはできるが、新しいことはできない。企業もまた同じ。ケースメソッドの場合は、自分が課題の当事者になったつもりで、自分だったらどうするかを、グループで話し合う。

ということで、あらかじめ出された「宿題」。宅配専門の店を任された岡田店長が抱える、問題をまずはグループでディスカッションし、その後、各自が岡田店長になって各自自由に発言していく。教師は議論の助成役として、発言を促し、対案を出したり、出させる。

具体的な内容は割愛します。

文責・伊藤

日時: 2008年12月 1日 23:57
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