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講義抄録(2月):汗と努力が報われる社会を作る

片岡 勝さん(市民バンク代表)

大学卒業後、大手銀行に勤務する傍ら、市民選挙に携わり、労働組合等の活動を行ってこられた片岡さんは、80年代半ばに銀行を退職。その後は前例のない起業家として、まず、プレスオールタナティブを設立し、新しい、価値軸や社会システムに関するニュースを世界に発信してきました。その一方で、途上国との対等な関係をつくり、継続的な仕事作りを目指して食品や民芸品などを輸入するフェアトレードの「第3世界ショップ」、地域の担い手となる起業家を応援する「市民バンク」、女性のための世界銀行日本支部「WWBジャパン」、これからの社会を変えるのは若者と女性だという自らの主張に基づく学生支援事業など、次々と事業を起こしてこられました。

行動は世界に及び、大学の講座では学生たちを新たな社会の起業家として、各地に送り込んでこられてきました。そうした中で重ねてこられた「コミュニティビジネス」の実践は、常に新機軸を打ち立て、地域社会にいかに活かすかを基調としてこられたようです。

旧来の価値観に囚われず打破せよ。国や行政に引きずられるな。管理せず、自主的・自発的であれ。地域が主役の時代だ。......と、熱気と活力あふれる講座は、14日午後の講義と、これを受けて受講生に課された「私のコミュニティビジネス・プラン」発表・コメントと2日間に及びました。ここでは、初日の講義抄録のみ記録しておきます。

自発性で働くとうまくいく

グローバル化のルールを作った人が報われる、自由を謳歌できる一方で、勤勉を馬鹿にした社会をつくった。  アメリカがグローバル・スタンダードをつくってきたが、行き詰った。グローバル・スタンダードは日本も推進してきた。が、次にどうするか展望がない。オバマが出てきてアメリカを羨ましいと思ってはいけない。(日本版)"オバマ"が出る幕のない日本は、「農村力」から作り直すしかない。政府や自治体はやらない。

九州の黒川では自治体競争として予算に支えられて地域作りをやったが、予算がなくなると終わった。自分たちで自発的・内発的にやったことが生き残る。みんなが自分でやることだ。 難しくなくて、楽しくて、お金のハードルが低いところがいい。都市で起業しようとすると、コストが高い。

(片岡さんは最近)2年半農民をやっている。60歳を過ぎたときに、小さい事業をほとんどゆずり、残したのは、市民バンクくらい。会社は若い人に渡すと良くなる。社員のことは気にしない、放し飼いがいちばん。管理しちゃだめだ。

コミュニティビジネスは管理しちゃだめ。自発性で働くと、うまくいく。現在までに教えた大学卒業生が2千数百人、そのうち約1割・全国に2百数十人がコミュニティビジネスについたが、そのうち、自分で事業した人は二十数人。女性が圧倒的に多い。男性は言い訳が多い。女性は走り出すまで慎重で、走り出したら止まらない。男性は儲からないと辞めてしまう。女性は地域が大事だとか言いながら、帳簿を見ない、バランスを見られない。が、中心の7,8割は女性で、入ってくるのも女性が多い。コミュニティビジネスは生活ビジネスだから女性が多いのだろうか。

どういう人が入ってくるかというと、ゴールドマン・サックス(GS)に勤めたような人が来る。以前『週刊現代』で娘を就職させたい会社のランキングが出ていたが、GS、三菱UFJ、市民バンク・・となっていた。GSは儲けを言うが、管理をしない会社だ。

農山村から

北海道で"町内レストラン"を4か月で5軒つくった。なぜか。それは、百姓の問題であった。例えば117円で売っている野菜は、生産者には17円した入らず、あとは流通と料理人にいっちゃう。だから高く売れて使ってくれるところをつくりたかった。

行政が潰れていく。潰れていったところの砦をつくっていかなくてはならない。北海道は依存体質が強いところだ。北海道開発庁があり、金で成り立つ地域の体質で、"なんとかなるさ"と言ってるうちに、潰れてどんどん廃業していくところを、金がないのに、誰かが何とかしてくれると思っている。ところが政府は借金はつくるが、金は出さない。

一番の借金王である政府は、(年度末の)3月までに金をばら撒いている。(失業者が増加し、不安定雇用が問題なのに)持続的雇用にならない。が、百年先を見つめた政策的雇用を作らなくてはいけない。これを、農山村から言いたい。

石破茂(現・農水相)は、米の生産調整(減反)の「選択制」を言い出した。民主党は戸別保障を打ち出している。今まで調整金を使い、やる気をなくさせてきた。しかし、みんなで作らなくてはいけない。

社会をいかに機能させるか―を考えるのがコミュニティビジネスだ

パラグアイからメールが届いて、有機(オーガニック)の種子を仕入れてきたのでぜひやりたい。作付け契約をしてくれ、という。で、広さは? と訊ねると6万町歩だという。 今、日本の政府がやっている大規模化の政策は、国際競争にはならない。それよりもっときめの細かいことをやらなくてはならない。

生産―流通―加工―消費のインキュベーション(羽化装置=生み育てる装置)施設を地域につくった。八百屋にも農家自身が売る。携帯電話で売る実験も始めた。首都圏の高級スーパーとも組み始めた。消費者と直接結び付ける。消費者は農家まで足を運べば安くなる、なるべく消費者が汗をかくようにする。

毎年2000人くらいを農村に送っている「農村耕作隊」は、農産物の栽培・収穫に学生が時給制度で徹底的に働く。例えば山口県ではガーベラを学生が時給700円で刈り取りに行く。5時間で3500円だが、ガーベラ分を差し引いて給与をあげる。これは、努力する仕組み、中間業者を減らす仕組みである。

かつてキューバでは経済封鎖を受けてなにも入らない状態になり、国民1人当たり5kg痩せたが、乗り切った。 ハバナでは、180万人くらいの人々が都市農業を体験したが、その結果、20万人の人が、地方に移り住んだという。

今年1年は日本が変わる年だ。政府の機能がどうなるか。土地が大量に出た時に食糧をどうするか。こういうときに、(食糧を)どうやってつくるかが、コミュニティビジネス。 社会が機能しなくなったときに、どうやって機能させるか。行政が行き詰ったときに、どうやったら社会を支えられるかを考えるのが、コミュニティビジネスだ。 クルマの企業は技術が優れているから儲かっているというのは、嘘だ。円を安く安くすることで、輸出産業が儲かるようにしてきたのだ。

金融危機にいたり、円が高くなると、豊田市の歳入は96%減少した。1つの企業に依存すると危ない。内需型経済にしなくてはいけないとみんな言ってるが、そのイメージを持っているのは僕ぐらいだ。内需型経済とは、地域内での、福祉、教育、環境、食が内需をつくるということ。  今、中国では内需型産業にものすごくシフトしている。日本はヨーロッパよりもアメリカよりもGDPが落ちている。予想をはるかに超えているのに、相変わらずの予想を言い続け、将来展望を持たない人が、金をばら撒いている。

セクター分野別に見てみる

行政セクター

ほとんどが機能不全。地域リーダーになっている例はほんとに少ない。もし、事例をつくればトップランナーになる。池田町が事例をつくれば広がる。みんながまねる。法律でつくろうとすると焼け太りする人もいる。 法律でつくろうとしても、ほとんどコストの割にパフォーマンスが悪い。

企業セクター

利益を中心とした社会は必要だが、それは自分の懐に入れるためではなく、地域に再分配するのが大切。時代のニーズに合ったことをやればいい。無駄をやらなければいい。「金の使い方を知らない人が金を儲けるほど危険なことはない」とドラッガーは言った。 金がないからできないことはなかったが、能力がないから、志がないから、事業はできないのだ。

<社会貢献コース>

島根の石見銀山の地域で、廃業旅館を学生がやっている。今、1年で5000軒の旅館が廃業している。すべてお客があるのに廃業している。主な理由は、動線が長い、階段が急などで、女将が歩けなくなった。が、島根は世界遺産になり、お客が来るようになった。  廃業した島根の旅館を、教え子の山根多恵が"女将を1回やりたかった"というノリで、やってみた。で、半年で前年1年分を上回る実績を上げた。1年間やったので、今度は週休4日制で、社会貢献をやってみたいと、金・土・日しかやらないことにした。月~木は畑をやって、仕入れも集中し、効率的になった。  農園をやったので、近くの農家とも仲良くなった。95歳の新規就農者の農作物も、あそこでは買ってくれる。できた農作物は、JAより高く買い続けているので、どんどん作付面積が増えてきた。

分かっている人と突出していく

また、作付面積だけでなく、価値をつけて出すということも始めた。例えば、タケノコはそのままでなく、湯がいて出す。値段は、JAで聞いたり、農業新聞で景況を見て、自分で値付けをする。湯がいて出せば、4倍くらいの値段になるので、みんな湯がいてきて、その場で支払われるので、現金収入になる。

支払いも昔はこっそり支払っていたが、2年半かけてオープンにやるようになった。あまり高くすると売れないので、市場性をつけて売るようになった。その売り方も、携帯電話で買えるようにした。また、ITを使って、タッチパネルで自分で入力できるようにして、東京でも買えるようにした。すると東京の高級スーパーマーケットが面白がって取り引きをするようになった。

取り引きで大事なのは、おばあちゃんの笑顔。有機栽培か、無農薬かと聞かれたら、おばあちゃんの笑顔を見せる。

世界遺産である、石見銀山地域を竹が繁茂して壊し始めたので、今度は竹を切る運動をした。竹を切るコースでプラス5000円としてやったら、客が来てくれた。 世界遺産だからといって、ぼ~んと客を取って稼ぐというのはやらなかった。それで旅館業界から嫌われて、協会から脱退した。おかみの会からも嫌われた。イージーに15%ピンハネする旅行業者もすべて切った。イージーな人たちは人生の軸がないつまらない人が多い。この人たちのために時間を使うのもやめようと言ったら、JTBが客として大挙してやってきた。基本は
 ・常識とは付き合わない
 ・古い体質とは闘う
ことだ。すると、最初は、行政も含めて、よってたかってスポイルして、追い出しにかかってきた。が、今では引き分けに。去年くらいから先祖伝来のものを渡さない、いや売ろうと意見が二分していた、25町歩の山を、最後は村で採決をして、売る派が勝って、自分たちの娘や息子を応援しようということになって、買わしてもらうようなった。

最初は追い出され、次に引き分け、そして今......。いいところ、分かっているところと、付き合うしかない。分かっている人と突出していくしかない。 今までの古い秩序、例えば大企業は上司に稟議書を書いて決済を仰いでいくというやり方では、活力がない。

内需経済とは

コミュニティビジネスは今から軸が変わる。(破綻したアメリカの)リーマンブラザースがやっていたのは、ローンを小口債券にして売り、その債券をまた売りという、「逆ネズミ講」で、だれも分からなくなってしまった。信用が信用を使って、実体経済の何百倍も膨らんだ信用膨張のあげくだった。それは返せない金でも頑張った、アメリカのグローバルスタンダードであった。

が、自然はそうはいかない。内需経済とは、エネルギーや食の自給自足を達成していくことだ。これからの事業としては、農林酪魚をすべてやりたい。農業は始めたが、タンパク質のことを考えると、漁業をやりたい。海をきれいにするためにも、貝の養殖をやりたいし、雑魚が多いのを選別して、小さい魚を逃がす仕組みをやらなくてはならないだろう。エネルギーは電力会社に頼まないで、自給していく。

これら1つ1つの事業として、地域全体でのシステムとしていくように、提言し発言していくのも、コミュニティビジネスではないか。

ルールは自分たちでつくる

努力すれば良くなった時代は20年前に終わった。それまでは頑張れば良かった。12時間労働や家族で交代に夜も寝ずにやれば良くなった。が、中国の17倍もの賃金の労働力は、(自分の手足を食うような)カニバリズムでは追いつけない。輸出も難しくなって、頑張リズムではだめになった。

もはや、旧来型の頑張リズムでなく、ルールを自分たちでつくらなければいけない。自分たちで農村をデザインしていい地域をつくっていく。 市民の良識、市民が判断し、豊かにならなくてはいけない時代だ。

世界のルールは、地域単位で自立していって、新しい内需型の事業を作り出していく競争になるだろう。それには、内側で回していく。行政やグローバル企業に依存していくのではなく、地域で回していくことだ。

農山村の力、一人ひとりの力が、どれだけ生まれてくるかが勝負だ。こういうやり方はアメリカもやろうとしている。ヨーロッパには自信がある。資本主義でも社会主義でもない、ガンジー主義だという、インドも乗ってくるだろう。これから怖いのは、ルールから外れる日本の左側にある大国ではないか。

市民の自発性と、市民がリスクを取る。自分たちの力で問題を解決し、必要なことを作り出していく。これこそが、日本が世界に発していくことではないだろうか。

霞ヶ関が使い始めた言葉は、生命力が無くなっていく。後追いではだめ。「コミュニティビジネス」という言葉ももう使わない方がいいだろう。自分たちでよりふさわしい言葉を探して、ルールを作り出していくことだ。 先を作っていくこと。エネルギーを加速させながら、摩擦エネルギーとして生命力を作っていくことだ。

文責・伊藤

日時: 2009年3月 2日 00:57
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