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講義抄録(3月):食糧危機と食の不安はなぜ起きたのか

~ グローバリズムから地域へ

天笠啓祐さん(ジャーナリスト/市民バイオテクノロジー情報室代表)

食のグローバル化と、遺伝子組み換え作物の危険性に早くから取り組み、ジャーナリストとして、「市民バイオテクノロジー情報室」代表として、研究と発言を続けてこられた、天笠さんに、食の世界を中心に今なにが起こっているのか、その危険性とはどういうことかを講義いただいた。

いま世界で何が起きているのか?

大量生産→大量流通→大量消費社会が崩壊をもたらし始めた。大量廃棄がもたらしたことはまぎれもない。石油の埋蔵量はあと半世紀くらいしかない。わずか1世紀で人類は石油を使い果たすということが、異常である。人類は後世をどう見るだろうか。きっと「あんなにひどい世紀はなかった」とみるのではないだろうか。

拡大することを前提とした経済は、下がるのは失敗とされて、右肩上がりを続けてきた。これがいま、行き詰まった。それはテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの耐久消費財が行き渡たり、あとは買い替えしかない。あるものを捨てさせることで、新商品を買わせるしかない。その新商品開発が、90年代半ば頃から限界にきている。

企業も企業に勤めていた人も、世界中で金融商品へと手をだした。その結果、実態経済とかけ離れたバブル経済が膨らみ、再び右肩上がりを始めたが、このバブルにサブプライムローンという針が刺さった。金融バブルがはじけて、実態経済に影響を及ぼさないようにということだったが、実は逆で、実態経済がはじけて金融経済へいき、企業の生き残り策となり、その金融バブルが崩壊したのだ。しばらくは厳しい状態が続かざるを得ない。

民営化という危険な「解決策」

市場経済という、市場に委ねる解決法で、民営化=民間企業に競争を委ねるという方法が取られようとしているが、それはとても危険な賭けである。

例えば、オーストラリアでは水は川から取水するが、川の水が減った。沿岸の農家がすべて川から取水すると共倒れになる。水が民営化し、ある農家は農業をやめ、代わりに水の販売を始めた。水の量が少なくなるほど、水利権で価格が高騰する。その結果、農家は水が買えなくなり、水の販売に転じた農家と共倒れするということがあちこちで起こった。

日本では例えば、新潟では企業(ゼネコン)が農業に参入してきたが、儲からなかった。すると金目のものを売り払って撤退したが、売り払ったなかには土もあった。で、企業が撤退した後、農業ができなくなってしまった。

企業が農業に参入してくることで、農業が活性化するということはない。むしろ民営化がいかに怖いか、ということだ。民営化に解決策を委ねるのは危険ということだ。

第一次産業の切捨て

WTOは全会一致方式でなかなか自由化が進まず、代わりにFTA協定がどんどん結ばれている。その中で、日本政府が相手国に求める自由化は自動車であり、相手国は日本に食料品を求め、その結果、日本は自動車を売って食料品を受け入れる構図になっている。

全漁連の人が言うには、鹿児島の漁師の平均収入は年250万円。ただし、魚を獲って得る収入は1家平均90万円。漁をした収入では生きていけない。残りは年金か生活保護であり、漁師から見ると、農家がうらやましいという。

その農家の時給は179円。格差社会の中、ワーキングプアを構成している圧倒的な割合が第一次産業である。これはグローバリズムがもたらしたもので、さらに言えば、日本政府の政策がもたらしたものである。

農漁業の窮乏と食の安全は同根

コンビニの和風幕内弁当の輸送距離を1つ1つの食材について出していったら、16万キロ―地球4周しているのと同じ―の旅をして、500円くらいの安値で売っている。日本は、世界の果てまで安いものを買いに行っている。

野菜は圧倒的に中国産で、中国に依存している。

冷凍餃子事件は、日本の生協が(中国の)天洋食品に造らせていた。天洋で働いている人の賃金をよく調べると、自給20~30円。現場で低賃金で働いているのは、圧倒的に農村から来ている人たちで、底辺を形成しているのが、中国の農民である。餃子事件が発覚して、その前に起こった食肉偽装のミートホープ事件とのつながりが見えた。ミートホープも生協がからんでおり、もう一つ、同社がからんでいたのが、冷凍食品メーカーのカトキチの事件。カトキチは中国でいちばん冷凍食品をつくっている。汚染米問題を起こした三笠フーズも、構造は同じである。

食糧危機の構造とバイオ燃料

洞爺湖サミット(G8)で、地球温暖化と食糧危機がテーマとなった。そこで議論となったバイオ燃料とは、バイオエタノール=酒(トウモロコシ、サトウキビ、コメ、セルロース)が9割で、残りがバイオディーゼル=油(ナタネ、大豆、パームヤシ)である。

バイオ燃料はいい燃料だと思っている。小さい規模でやれるし問題ないと思っている。が、ブッシュ大統領時代に、大量生産の仕組みを作ろうとして、一気に、環境問題として矛盾が出てきた。トウモロコシを栽培すると、農薬や肥料を使い、刈り取りに機械を使い、収穫したものを貯める、輸送する、いずれも石油を使う。1㍑の石油を使って、1.1㍑のバイオエタノールをつくるという、ほとんど意味が無い。

ブラジルはサトウキビでエタノールを作っているが、1㍑の石油で7.6㍑をつくり、うまくいった。なぜか。トウモロコシはデンプンであり、いったん糖にして発酵させなくてはならないが、元々糖であるサトウキビやテンサイはそのまま発酵させるので、効率がいい。

日本は、バイオエタノールで援助するとしたが、バイオ用作物の引き取り価格は30円だという。農家にとってとても採算の合う価格じゃない。なぜこんなに安いかというと、石油との価格競争で30円の値が出てきたという。日本の全農地でトウモロコシを植えて、エタノールを作ったとして、できるのは1千万キロリットル。年間1億キロリットルの10分の1しかできない。全農地を使って1割のバイオ燃料を生産しても、それが食糧危機につながっていく。

環境問題の解決にならず、経済性が合わず、新たな環境破壊を招く可能性もある―バイオ燃料は効率も悪く、将来性がない。

遺伝子組み換え作物の現状

遺伝子組み換え作物(GM)は、アメリカが世界の生産量の3分の1を占めている。主な作付け国は、アメリカ、アルゼンチン、カナダ、ブラジルなど、北・南米中心を中心に広がっている。日本は作付けを認めてないが、世界最大のGM作物輸入国である。

主なGM食品は、トウモロコシ、ナタネ、大豆、綿の4種類で、食用油、油製品、コーンスターチなどだが、絞りかすを飼料や飼料用として輸入している。その中で、コーンスターチを一番多く使っているのがビールである。GMジャガイモは作付けされていたが、マクドナルドが使わないとしたところから、2002年からは作付けされていない。しかし、(米ウィスキーの)バーボンがGMトウモロコシを使わざるを得なくなってきている。

GM種子の最大手企業・モンサント社(米)は、米政府にプッシュさせてブラジルなど売り込みやすいところに売り込み、作付け地域・国を広げて大儲けしている。GM作物の中で半分以上を占める大豆はまだ作付け面積を伸ばしているが、中国の需要が急増しており、家畜の飼料として高値状態で取引されているために、ブラジル、アルゼンチンが大規模面積を拡大しており、ここにモンサント社が売り込んでいる状態である。

命の操作は人間の思い通りにならない

GM開発は1980年からで、あるものに他の遺伝子を入れるということでいろいろなものが開発されてきたが、実用化されたものは、除草と殺虫効果の2種類。

除草剤のラウンドアップは、植物を全部枯らす。そこで、このラウンドアップに耐える、耐性植物を作れば手がかからない。省力化とコストダウンが目的で、除草剤耐性GMを作って、雑草をラウンドアップで殺して必要な作物だけ育てるようにしたが、除草剤に耐える草(命)が生まれてきた。

殺虫には作物の中に殺虫毒素を持つ作物を開発し、作物自体が殺虫剤として農薬登録されており、殺虫剤を使わなくとも虫が死ぬ。これを食べるということは、すなわち農薬を食べるということになる。これを日本が最も食べているのである。

企業農業が多いアメリカでは、1戸当たり作付け面積は数百㌶が基準である。これにGM作物を使うと大コストダウンになり効果がある、というところでGMを使う。

自給率が低い日本は、一番GM作物を作っている国から輸入している、ということで世界で1番GM作物を食べている国であり、2番目は韓国、台湾となり、次に作っているアメリカ、カナダがGM作物を食べている。好対照なのがヨーロッパで、GMが流通していない。但し、日本製の味噌をドイツで買えば、出回ることになる。

現在、GM作物は、旱魃耐性をタバコで開発した。旱魃になるとタバコは本体を生きさせようと、葉と花を落としてしまう。葉が命のタバコは商売にならないため、水分が不足した際に葉を落とす仕組みに介入し、葉が落ちないようにした。こうなると葉は落ちなくなるが、生物の仕組みを変えてしまい、タバコとしてはかえって命取りになる。これは考え方の問題であり、経済優先で本来の植物の仕組みに加入することを考えなくてはならない。

流通目前のGM動物としては、最初に魚が手がけられた。例えば、3倍の成長速度をもつサケがカナダから開発された。成長ホルモンをつくるDNA技術を使って、これを肝臓に入れた結果、3倍の速度で成長するサケが開発された。

クローン家畜は、体細胞クローン家畜を米の食品安全委員会が安全宣言をし、すでに流通しており、これが日本に入ってくる。クローンは死産、流産が多い。それも24時間以内に死ぬケースが多く、病気で死ぬケースも多く、生き延びない。

「安全性」を認め、異常が多いのは認めるが、一定期間生き延びたのは問題ないとする。はたしてこれが「安全」か。

GM作物の課題

GM作物のもたらす問題としては、生態系の破壊、食の安全への脅威、多国籍企業による種子支配などが挙げられる。

アメリカでは、トウモロコシと大豆を交互に植えていたが、トウモロコシの価格が高騰して作付け面積を拡大した結果、連作障害と害虫発生を起こした。そこで、(殺虫性トウモロコシ)Btコーンを拡大させたために、殺虫剤耐性害虫が異常発生し、さらに農薬を多量に使用すると言う悪循環に陥る、「負の連鎖」が発生している。

韓国の「農業新聞」によると、韓国の種子会社主要6社が、バイオテクノロジー企業に全て買収されてしまった。次は日本の種子企業が野菜のGM作物のターゲットに狙われている。多国籍企業はいまやそこまで来ている。

除草剤・ラウンドアップを用いた結果、植物全部を枯らすために、作物残留はなかったが、ラウンドアップ耐性植物(GM)は残留する。そのGM作物に用いる除草剤主成分を投与されたラットの実験結果によると、投与されたラットが噛み付くなどの・攻撃性・凶暴性を示す結果が出た。

こうしたさまざまな課題に対して、国の規制が弱いため、市町村が独自の規制に乗り出し、広がっているのが現状である。例えば、交雑混入防止について、首長の認可制などにしているが、国が規制していないものを、自治体が規制、禁止はできない。

文責・伊藤

日時: 2009年5月 2日 23:27
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