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講義抄録(3月):地域資源循環型社会づくり

~山形県長井市のレインボープランを中心に~

菅野芳秀さん(アジア農民交流センター共同代表/農業)

2.8haの田んぼでコメをつくり、1000羽の鶏を飼っている菅野さんは、長井市の「台所と農業をつなぐながい計画」(レインボープラン)策定から実現まで中心となってこられたお一人である。台所と農業をつなぎ、消費者と生産者が連携することで住民主体のまちづくり目指す。その根っこは命の「循環」である。さらにその命の源は「土」である。......と説く、生ゴミをツールとして、レインボープランはなにを目指すのか。

農業とは、土とは、命とは・・・講義とフィールドワークを通してたっぷりと熱く、菅野講座は展開された。

循環型農業へのこだわり

循環型農業の要は、1000羽の鶏で、その鶏から得られる糞が貴重。鶏の糞100羽分を1年溜めると、3反歩の田が無肥料となる。田畑と鶏が循環して、循環型農業にこだわって作物をつくってきた。循環型は生命系の根本である。生命系がおかしくなったのが、循環型農業に取り組むことになったともいえる。

環境を守るということは、循環を取り戻すことだと思う。

192.1センチ、103キロの大男(菅野さんご自身)が立っていられるのは、循環系が休み無く回っているからで、滞ったら倒れてしまう。生きている循環系が巡っていること、循環系が機能しているから、生きているのだ。

地球もまた、水は地球規模で循環している。有機物の循環は、土に戻り、葉が茂り、落ちて、土に・・・と、いろんな循環が地球規模で巡っている。

循環して吸収しきれないもの、Co2とか、地球の呼吸機能で処理しきれないことで、温暖化がはじまっている

大事なことは足元、自分の家庭の中で循環を阻害することをさせないことだ。循環系農業にこだわって、百姓として暮らしてみて、実感するところである。

森をお師匠さんにして

(地元の)朝日岳連峰に行くと、木々、草、花・・・がある。葉が落ちて、腐食し、絶えず循環している。畑は連作障害を起こすが、山にはなぜ起きないのか。それは、循環があるなしに尽きる。循環型農家を自分自身にも、町全体にも広めたいと思った。

森の営みを町全体に拡大する―それが、レインボープランである。

長井市3千町歩の農地の9割が水田である。人口3万人、9000世帯のうち町に5000世帯が住んでいる。農業以外には、製造業が盛んで、東芝の城下町と言われてきた町が、いま経済に難儀している。経済ではワースト11位というが、東北全体を視野に入れた、住みやすい町の第1位に(長井市の)朝日町が選ばれた。

生ゴミ収集は町中の5000世帯を対象に100%が参加している。生ゴミは好気生発酵で、いい資源だが、9割が水であり、これを水切りバケツで台所から取るようにしている。

生ゴミ収集は①ゴミの分別がいい②持続する、ということがなくては事業化にならない。

「人はふんべつ、ゴミはぶんべつ」で稼動して11年。実際に収集している人は、6名で、そのうちシルバー人材センターの人が5名。

生ゴミがいいのは、これに蓄糞を混ぜると肥料効果を高める、肥料を期待せずに土づくりができる。多様な養分が含まれ、堆肥として一級であり、もったいないことに、レインボープランに取り掛かる前は、これを燃やし続けていた。

レインボープランによる作物は米や特別野菜があり、参加農家は50~70代のお父さんが多いが、米は若い人たちがつくっている。レインボープランを扱っている米屋には幟を建てており、野菜は"本日のレインボープラン野菜"を掲示するなどしている。

加工食品は、クッキー、納豆、豆腐、酒、まんじゅう、コロッケなどをつくり、「長井ラーメン」を開発した。

このような活動で、いままで現場の農地と加工業が離れていたが、レインボープランで両者はくっついた。直売所を開設し、市内に作物を戻すのみでなく、市民参加の発祥地にもなっている。結びつけているのは2つのNPOで、一つは、市民市場「虹の駅」、もう一つは市民農場。市民市場では、30名弱の市民スタッフが交通費500円のみで、午前と午後に2名ずつ、町づくりに自分たちも参加したい、ゼニカネのことでなく手伝いたい人が、参加し、運営にあたっている。市民農場では、40名くらいの市民が参加し、農作業を行っている。

消費者も生産者もなく、みんなで力を合わせて農業をやり、直売所を経営している。直売はスーパーの一角にも、農協にも品物をだしている。

また、「米作り体験学習田」では、3000名が学んでいる。学校給食はすべてご飯給食で、季節の野菜を提供し、少なくとも半分くらいの地域自給したいと思っている。

どこにもモデルがなかった町づくり3つの理念

1.循環

町が村を、村が町を支える、生産者と消費者が融合する町づくりを目指した。レインボープランに着手しようとした20年前には、「リサイクル」という言葉はあったが、「循環」という言葉はなかった。それでも、長井では「循環」と言ってきた。人間の居住空間をつくるのが、持続可能の基礎であるとした。

命脈打つ空間。役割転換、生産者から消費者への一方通行ではなく、循環システムをつくろうとした背景は、役割の転換が大事だと思った。終わりは始まりであり、始まりの終わり。生産と消費の融合が、町の消費者は生産の始まりで、娘が嫁に行って帰ってきたような感覚で、循環を捉えたい。

 

2.共に

市長といえども、生ゴミを持って収集所に向う。世代交していく仲間として、イコールの関係で、地域のことを分かち合う。

<地域100年の前の平等>

100年先、200年先まで持続していく、町の運営が大事だ。人々が「ゆったり暮らし」、「ゆったり終われる」を保障していく。人間が基本的に生きて暮らしていく空間を、どう保障していくか、100、200年先の観点でも耐えられる町をつくろうということだ。

<生命資源の平等>

業種の違いを超えて、市民が一緒になって考えよう。行政も、市民も、みんなが地域の生活者ということだ。行政主導じゃぜったいダメ。

<情報公開が原則>

形ばかりの市民参加でなく、決定を分かち合う、市民の声を聞いて行政が決めるのでなく、「市民」が決めていく。これまでは縦軸として国―県―市町村―住民があった。パイプが太いと金、仕事が下りてきやすい構造があった。そこには、公共事業があり、陳情・嘆願があった。が、循環型社会は、住民参加、一人ひとりの自発性、横軸が基礎となる。商店街は自発的に回らないとうまくいかないし、自分の田は自分で自発的に回さないといけない、というのを基礎にする。共にイコールの関係で議論し、決定するのが大事。

3.土は命のみなもと

土はたくさんの命があるのが、やすらぎ、可能性と未来、健康となる。

<地域社会と地域農業>

町と村を分けると、村の作物は、町の頭を越えて、都会とつながろうとしてきた。町のスーパーに村のものが並んでいない。町の消費者は、村のもの以外のものを食べてきた。村は緑の風景でしかなかった。

新しい社会的な交流に、田舎の豊かさは活かされていない。町と村が結びつくことで、田舎の豊かさが活かされる。地域を地場のもので満たす力。地域のものを町の人も食べるという関係が大事。

田畑を生ゴミの捨て場にするのか、農(食)への町からの参加にするのか。全国からいろんな視察者が来るが、大方は、ゴミの処理方法として視察にくる。ゴミを燃やすのでなく、田畑に捨てられるならこんないいことはない、というかんじだ。気持ちとして分かるが、全く筋が違う。

町から農へ、土への参加なんだ。

循環型社会への、参加なんだ。

土は命のみなもとを、町づくりの理念とすることだ。

生ゴミによる循環型社会づくりは、食糧政策、環境政策、住民自治、でもある。

市民から生まれ、市民が育てて

環境保全型農業は11年前から取り組んでいる。レインボープランの作物はいつでも食べられる。地域の土を豊かにして、きちんとした作物をつくって、分かち合う。健康で、寿命をまっとうする。命がなによりも尊ばれる町をしっかりやることが大事だ。レインボープランはここから始まる。ここを基点としている。

ゴミ"処理"としての生ゴミじゃない。資源として活用しながら、未来を豊かなものに切り替えていこうというものだ。

1980年代の終わりに、100人の市民に手を上げてもらい、集まってもらった。さらに主要なメンバーが集まり、「いい町づくり委員会」をつくり、「町に恋して」(報告書)にまとめ、前々市長に提出した。報告書を提出したとき市長は代わった。前市長を否定する市長は、委員会も「町に恋して」も封印したままにした。前市長のためでなく、町の未来のためにやったのだからと言ったがうなずかず、ここからが闘いだった。

もう一度市民にかけなおそう。解散といわれた市民から市民に訴えていった。町を構成する主要な人や団体に呼びかけ、検討して、市民に働きかけようとした。

行政は正しい提案だから動くのではなく、多数の意見だから動くところ。行政が動きやすいように、主要な人、団体、特に女性団体に話を持っていった。

市民からうまれ、市民から市民へ、中核団体へと強固にできたところで、行政へ働きかけ、農協へ働きかけた。人間ドラマに満ちた10年間だった。

頑張った4つの条件

ある人が、「この地域は誇りです。レインボープランがあるから」というのを聞いたとき、やったー! と思った。  頑張った4つの条件がある。

  1. 野心を持つ ― 野心は個人の利益。変わってもいいから、一つだけ青写真を描いて何度も反復すると、向っているから答えは出てくる。
  2. 志を持つ ― 志は社会の利益のため。
  3. 笑顔 ― 夢は、理念は、笑顔とともに話す。笑顔で語れるよう血肉化すること。
  4. 誠実さ ― 誠実さを土台に乗せていかないと、説得力はない。誠実さは夢の実現に大きな力となってくれる。

そして、 ばかになれ。

小利口ばかりしか生まれないから、これが日本の限界をつくってきた。日本の百姓が明治維新をつくってきたのだ。いまは、大ばかやろうが生まれてこないのが問題だ。

自信を持って大ばかやろうになろう。

文責・伊藤

日時: 2009年5月 3日 00:02
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